
【PICK UP】 HIGHLIFE★HEAVEN vol.12
2016.12.16.Fri西アフリカ発のポピュラー・ミュージック、ハイライフを中心にアフリカン・ミュージックについてお伝えする本連載の12回目!
どうもこんにちは。shochangです。
昔々、吉祥寺にソウル・フラワー・モノノケ・サミットを観に行った時のことだった。
その日の対バンは往年のフォーク・シンガーであり、シンガー・ソング・ライターの友部正人だった。友部正人の音源を聴いたこともあったけれど、目当てがモノノケ・サミットだったこともあって、正直なところそれほど興味があったわけではなかった。
会場について、ビールを買おうと並んでいる時に、友部正人の演奏が始まった。自分はちょうどお金を払うところだったけど、音が鳴らされると同時に、思わず背後にあったステージを振り向いて仰ぎ見てしまった。友部の歌声に振り向かされたのだった。友部の声にはそれほどの力があり、耳を通して聴く者を惹きつける”何か”があった。
その日以来、友部の大ファンになったことは言うまでもない。
同じような体験は、ハンバートハンバートを観た時でもあった。それはソウル・フラワー・ユニオンの毎年3月に行われている恒例の闇鍋ライブの日で、少し遅れて会場に入ると、すでに演奏は始まっていた。忘れもしない彼らの名曲である『おかえりなさい』からの『バビロン』を目の当たりにして文字通り固まった。初めて観るハンバートハンバートの歌心にがっちり心をつかまれてしまったのだった。
その日以来、ハンバートハンバートの大ファンになったことは言うまでもない。
そんな経験をして以降、自分は稀有なシンガーの歌声や歌心が持つ”力”と言うものを信じずにはいられないのである。
私の大好きなガーナには、”ゴールデン・ボイス=アフリカの黄金の声”の異名を持つパット・トーマスと言うシンガーがいる。
古くはブロードウェイ・ダンス・バンドやその後継であるウーフル・ダンス・バンド、オギャタナア・ショウ・バンドなどで歌い、C.K.マンやエボ・テイラーなどともコラボレーションしたり、その他数え切れないアーティストの音源で歌っているパット・トーマスは、ソロ・シンガーとしても成功していて、未だ衰え知らずの現役バリバリ。
先日そんな彼のキャリアを網羅した、極上の編集盤がイギリスのストラト・レコードよりリリースされたので、チェックしてほしい。

・PAT THOMAS (AFRICA) – COMING HOME
彼の歌声は確かに澄み切っていて、そのファルセットは気持ちの奥底に鳴り響くかのようで、”黄金の歌声”とは言い得て妙だなと思う。
彼の歌声に魅了されると、例えその曲のクレジットにパット・トーマスの表記が無くても、聴いただけですぐにわかるようになる。そんな”力”を持っていると自分は思う。
パット・トーマスほどの知名度はないが、1950年代から1960年代にかけて、ガーナの主要なダンスバンド・ハイライフの楽団でシンガーとして引っ張りだこだったボーカリストがもう一人いる。その名もジョス・アイキンス。
彼がシンガーとして参加したダンスバンドの楽団は枚挙にいとまがない。
パット・トーマスやエボ・テイラーも参加していたブロードウェイ・ダンス・バンドのキラー・ナムバーである『WOFO NONO』や『DANCE MERENGUE』、メッセンジャーズ・ダンス・バンドの『HIGHLIFE SHUFFLE』、他にもイグナス・デ・スーザのメロディー・エイセスや元スターゲイザーズ・ダンス・バンドのエディー・クアンサーがロンドンで結成したブラック・スター・バンドなどでも、その粘り気と塩っ辛さ、深みの入り混じった最高の歌声を聴かせてくれる。
・THE MESSENGERS DANCE BAND – HIGHLIFE SHUFFLE
ジョージ・リーの率いたメッセンジャーズによるハイライフ・クラシック、あるいはハイライフ・ファウンデーション。シャッフルのリズムに、タメの効いたアイキンスの歌声が絶妙にマッチしている。
・MELODY ACES – SURU LO DARA
イグナス・デ・スーザのメロディ・エイセス。アイキンスともう一人のボーカルとのアンサンブルが実にエモーショナルなハイライフ・ナムバー。
・BROADWAY DANCE BAND – BEYE BUU BEYE BAA
数々の傑物ミュージシャンが揃っていたブロードウェイ・ダンス・バンドによる1962年頃の録音。スウィング調のイントロがどうしようもないほどにかっこいい曲の中、粘り気たっぷりとアイキンスがメロディアスに歌い上げる。
・THE BLACK STAR BAND – ODOYE FESINSIKA
スターゲイザーズ・ダンス・バンドやグローブマスターズ・ダンス・バンド、後にソロでも活躍するエディー・クワンサーがロンドンの西アフリカ・コミュニティで結成したブラック・スター・バンドによるハイライフ・クラシックのカバー。この曲は、カカイクズ・ギター・バンドのアルバムにも収録されているけれど、スウィング感満点のこの曲と対照的にカカイクズはいなたいギターバンド・ハイライフを聴かせてくれる。
・THE REPUBLICANS – ABAAWA BEGYM’ LETTER
こちらはガーナのハイライフ楽団の中でもオブスキュアであり、個人的なフェイバリットの一つであるリパブリカンズ。クレジットはされていないが、10インチに収録されていないこのシングル・ナムバーの歌声も見事なアイキンス節。
・POLICE DANCE BAND – ASPENSA
ラストを飾るのが、1960年代のハイライフ楽団でも輪にかけてオブスキュアなポリス・ダンス・バンドの大名曲。個人的にはこのナムバーは、ラスト付近のエモーショナルな管楽器に悶絶しそうになるのだが、この曲でもアイキンスは歌っているのである。
以上、クレジットで確認できて、手元にあるアイキンスの音源を紹介させてもらったけれど、クレジットされてなくてもアイキンスが歌っている音源は、まだまだ知られていないだけで、たくさんあるんだろうと思う。
それはまるでジャマイカにおけるスカやロックステディの時代に、クレジットはされていないけれど、ひっそりとウェイラーズなど後の大物のアーティストがコーラスで参加していたりするってエピソードと同様に、とてもロマンを感じさせてくれる。そう、私はアイキンスに恋をしてしまったのだ。未来のない、壮大な片思いを。
【DJ Schedule】
●SHOCHANG (HIGHLIFE HEAVEN)
◆ 12/22(Thu) Nishi-Ogi Riot City Blues』@西荻窪Pit Bar
OPEN/START 19:00 – 23:00
https://www.facebook.com/events/1645981839047686/
Soundcloud: https://soundcloud.com/shochang-highlife-heaven
Mixcloud: https://www.mixcloud.com/shochangmorichan





