【PICK UP】HIGHLIFE★HEAVEN vol.32
2017.11.20.Mon西アフリカ発のポピュラー・ミュージック、ハイライフを中心にアフリカン・ミュージックについてお伝えする本連載の32回目!
古今東西、歌に色恋沙汰はつきものだ。
恋やら愛やら横恋慕やら助平心やらが昂ぶり過ぎて、にっちもさっちもいてもたってもいられなくなった時、人は歌を生み出すのだと言う(たぶんね)。
それはもちろん5、60年前のガーナやナイジェリアの若者たちにも共通していたに決まっているのである。
そんな人恋しい今日この頃、寒くなってきたこともあってか、ワタシの心に絶妙なマッチング具合をみせているのが、このE.T.メンサーと彼のテンポス・バンドが1963年に世に放ったこのナムバー。
・E.T. MENSAH & HIS TEMPOS BAND – AWIREHOW
これは、最初のAメロからBメロ、サビまでがガーナの言語の一つであるアカン語のファンテ方言で、AメロからBメロ、サビまでがピジン英語で歌われている。
ボーカリストはダン・アクアイェ。
英詞部分をお聴きになれば分かる通り、情けないほどに心の琴線を揺さぶるラブソングとなっている。
ワタシの拙い英語力で聴き取れる限りで解釈すると、
「オマエなしじゃ生きてけないんや 頼むから戻って来ておくれや」
的なことが歌われている。
美しいメロディとエキゾチックかつムーディなホーン・アンサンブルが実にロマンチックに涙腺を刺激するではないか。
情けない男泣きのラブソングと言えば、不遇の男デレ・オジョも負けてない。
・DELE OJO & HIS STAR BROTHERS BAND – I DON’T KNOW WHY SHE LOVES ME
「彼女がなぜオレなんかを好きなのか、皆目見当もつきゃしないんだ」
なんと言う自己評価の低さ極まりない、自信の無さにクヨクヨしまくってる思春期全開のタイトルなんだろうか!最高である。
サウンドはトーキング・ドラムやパーカッションを多用し、当時のナイジェリアにおける2大ポピュラー・ミュージックだったハイライフとジュジュを繋ぐ、かなり重要なモノとなっている。タイトルを合唱するバックのコーラスワークもグッとくるじゃないか。
そんなデレ・オジョだが、別のシングルではシンプルに愛する気持ちを歌っている。
・DELE OJO & HIS STAR BROTHERS BAND – I LOVE YOU
時系列から考えると、こっちのシングルが先で、そのうち好き過ぎてたまらなくなっちまったもんだから不安になり始めて、さっきの「なんで?」なナムバーに至るのかもしれない。違うかもしれない。シングルのキャット・ナンバーを確認すると違うみたい。
いずれにせよ、このラブソングもなかなかの哀願的な要素をはらんでる趣がある。とにかくデレは人を愛すと情けないぐらい正体をなくす男だったのかもしらん。これはもうデレは情に溢れた男で決まりだ。最高じゃないか。情けない男に悪いヤツはいない。
だがしかし、デレの名誉の為に言っておくと、彼は決して情けないだけではないんだ。
デレはナイジェリアのハイライフ・オールディーズの巨人、ヴィクター・オライヤの楽団にレックス・ローソンやヴィクター・ウワイフォ、ジョー・メンサーなんかと一緒に参加していたキャリアを持つなかなかのキーマンで、さきほどのダブルサイダーである『I LOVE YOU』のシングルのA面では、キレッキレのハイライフとジュジュのクロスオーバーを聴かせてくれるのだ。
・DELE OJO & HIS STAR BROTHERS BAND – ONE NIGERIA
「オレたちは誇るんだ ナイジェリアを」
と、高らかに歌う。恐らくナイジェリア独立の1960年あたりの録音なのだろう。
そんなデレ・オジョだが、ナイジェリアでハイライフが飽きられ始め、代わりにジュジュが台頭し始めた時期、後にジュジュにおけるスーパースターの1人となるI.K.ダイロとの間でバチバチの勝負を繰り広げたが、オーディエンスのニーズを獲得できずに失脚し、表舞台から姿を消したらしい。ショウビズ界はいつだって厳しいのだ。
しかしながら、デレが勢力を失うと共に、ハイライフ色の強いジュジュも淘汰されていったと言うんだから、ハイライフ・ヘブンとしては複雑な気持ちではある。
さて、今回はラブソング特集の様相を呈しているが、本来の目的はそうではなく、ハイライフには実はピジン英語で歌われている曲も多いんだと言うことを知って欲しかったのである。
言語感覚ってのは正しく千差万別なもので、英語の曲ですら全然耳馴染みしない人もいると同時に、ワタシのように「アカン語よりもイボ語とかヨルバ語の方が耳馴染みいいよなあ」なんて思う輩もいるんだから面白い。
余談だけど、K-POPを日本の市場に合わせて日本語で歌わせるのって昔から流行ってるけど、言うまでもなくハングル語の方がカッコいいし、あれってリスナーを結構ナメてるよなあなんて思ったりもする。好きな人は日本語じゃ満足しないんだし。
それはそうとして、語感も一つの楽器だとするならば、現地でアレンジされた楽曲には現地の言葉をメロディに乗せるのが一番だと思う。いわゆるセオリーってやつだ。
思うのだが、ハイライフと言う、ここ日本においては”ド”がつくほどマイナーな音楽ジャンルにおいては、彼らのいなたいサウンドに、ある程度ソフィティスケートされた英語(ピジンなのでいなたいはいなたいんだけどね)で歌われるだけで、少しは耳馴染みが良くなるんじゃないかとも思うのだった。
てことで、英詞で歌われる激キラーなナムバーを2つ続けて今回はバイナラしよう。
・CHARLES IWAGUBUE & HIS ARCHIBOGS – BABY I TIRE
「ベイベ、オレはもう疲れたよ…」
なんつって歌われるのは、E.C.アリンゼと同世代のナイジェリア・オールディーズの雄チャールズ・イワグブエのシングル曲。B面は名ハイライフ・コンピのタイトルにもなった『MONEY NO BE SAND』。イケイケのリズムにホーン・アンサンブル、そしてコーラス・ワークは垂涎モノだ。
・THE HARMONIERS – HARMONIERS ROCK
この時代のハイライフ楽団がツイストをやってたりするのはキング・ケニトーンやブラック・サンチャゴスなどでお馴染みだが、このハーモニアズのこのナムバーはその中でも実にストレートなもの。
ギターは後にブロードウェイ・ダンス・バンドやウーフル・ダンス・バンドなどで中心人物となるスタン・プランジ。やっぱり天才は違うもんだよねってことでバイナラ。
P.S
ゆるめのハイライフばかりを繋いだハイライフ・ミックス(的なモノ)を作りましたので、
良かったら休日のBGM代わりの聴いてみてくださいね。感想なんかも聞かせてもらえたら嬉しいです。
https://www.mixcloud.com/shochanghighlifeheaven/highlife-in-the-holiday-mood/
【DJ Schedule】
●SHOCHANG (HIGHLIFE HEAVEN)
◆ 11/29 (WED)
『カリプソmeetsハイライフ・ナイト』
@吉祥寺World Kitchen Baobab
Open18:00/Start19:30
Entrance Free
投げ銭Live:
ワダマンボ&アンディ (カセットコンロス)
with ビリー (from ガーナ) & ラティール・シー (from セネガル)
DJ:
Shochang (HIGHLIFE HEAVEN)
KULO
INFO:
http://wk-baobab.com/
イベントページ:
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Soundcloud:https://soundcloud.com/shochang-highlife-heaven
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