【PICK UP】HIGHLIFE★HEAVEN vol.27

2017.08.01.Tue

西アフリカ発のポピュラー・ミュージック、ハイライフを中心にアフリカン・ミュージックについてお伝えする本連載の27回目!

さて、今回はHIGHLIFE HEAVENこと不肖SHOCHANGが務めさせて頂きます。

先日、2017年7月21日にコフィ・パパ・ヤンソンが亡くなった。
享年73歳。母国ガーナで亡くなったそうだ。

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ヤンソンは1970年代を代表するハイライフ・アーティストであるチャールズ・コフィ・マンことC.K.マンのバンド、カルーセル・セブンのシンガーであり、その後はソロ・アーティストとしても活動したガーナを代表するヴォーカリストの1人だった。

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(『PARTY TIME WITH “CEEKAY”』のジャケから。左から2番目がヤンソン。左から、コンガのウィリー・サム・ジュニア、コフィ・パパ・ヤンソン、リーダーでありコンポーザー・アレンジャー&リード・ギターのC.K.マン、カバカとマラカスのトニー・メンサー、ベーシストのベン・オウス、ドラムのコージョ・ミンタ)

1944年生まれだったと言うので、E.T.メンサーやキング・ブルースと言った1950年代から60年代にかけて活躍したいわゆるガーナ・オールディーズのハイライフ世代よりも20歳ほどの開きがあることになる。

ヤンソンを見出した重要人物であるC.K.マンも2013年に亡くなっているみたいだし、いよいよもって当時を生きたミュージシャンが亡くなってきてるので、日本に呼ぶなら今がギリギリなのかもしれないですよ、みなさん。

いずれにしても、また1人ハイライフの偉大なシンガーがこの世を去ってしまった。とても悲しい。

キャリア初期のヤンソンが所属したカルーセル・セブンがバックを張ったC.K.マンの作品は、代表作の『FUNKY HIGHLIFE』などをMr.Bongoが再発していたりして比較的容易に聴くことができるので、気になったら是非探してみて欲しいところ。

ヤンソンもそうだけど、C.K.マン自体世界的に有名なハイライフ・ミュージシャンなので、たくさんの先人達が細かい解説付きのコメントを書いてたりする。なので本来ならば筆者の出る幕ではないかもしれないけれど、たぶん日本広しと言えどもヤンソンの追悼コラムを書いたりしてるのはこのウェブコラムぐらいだと思うので、しばしお付き合いください。

そんな筆者がヤンソンの歌声がフィーチャーされたC.K.マン作品の中で特によく聴いている作品『PARTY TIME WITH CEEKAY』からまずは2曲。


・C.K.MANN & HIS CAROUSEL SEVEN – NIMPA REBRE

わかる人にはわかる「ヤンソンのソロじゃないんかーい」と言うツッコミは右から左へ受け流して、『PARTY TIME~』の3曲目に収録されたこのナムバーでは”ガーナのゴールデン・ボイス”の異名を持つパット・トーマスとデュエットしている。

トーマスの声は確かに独特の透明感があって、様々なバンドなどで客演をしているが、どのレコードを聴いても『あ、これパット・トーマスだな』と分かるぐらい存在感のあるものだけれど、それに負けず劣らずバック・コーラスのヤンソンも充分存在感があると思う。


・C.K.MANN & HIS CAROUSEL SEVEN – M’AWEREKYEKYERE

同じアルバムの6曲目のナムバー。ミッドテンポのメロウなサウンドと、メロディアスに唄い上げるヤンソンのボーカル、そしてマンのギターとの絡み方が最高。

この曲にはどこか賛美歌の様な趣きも感じさせる。ヤンソンの母親は、メソジスト教会のコーラス隊のシンガーで、ヤンソン自身もメソジスト教会の学校に通っていたと言うので、それらの影響も多大にあったのかもしれない。

ちなみに、C.K.マンがヤンソンを見初めたのは、母親のお葬式で唄うヤンソンのタレント性に惚れ込んだからだそうな。

さて、続いては1976年にガーナの名門レーベルであるESSIEBONS ENTERPRISESからリリースされたコンセプチュアルなアルバム『BIG BAND』から2曲。


・C.K.MANN & HIS CAROUSEL SEVEN – TWER NYAME (K.YANKSON & E.TAYLOR)

こちらは近年再評価され、ガーナの”フェラ・クティ”と呼ばれるまでになったガーナのギタリストでありコンポーザー・バンドリーダーでもあるデロイ・”エボウ”・テイラーこと、エボ・テイラーとの共作ナムバー。

イントロのフックの効きまくったファンキーなホーンが、見事にエボ・テイラーが作り上げた楽曲であることを如実に示しているが、まるでビッグバンド仕様みたいなヤンソンのリッチなボーカルも実に美しいナムバー。彼の伸びやかな歌声と吹き鳴らされる管楽器の絡み合いを聴いていると、いつの間にか終わってしまう2分32秒間の恍惚。


・C.K.MANN & HIS CAROUSEL SEVEN – HAPPY SONG (K.YANKSON)

ラストを飾るのは、ゴスペルライクなメロディを持ったヤンソン作曲のメロウで甘いレゲエ・ソング。フロアライクではないので、なかなかかける機会は少ないが、月並みな言葉だけども、生きてることの幸せを噛み締める時間を作ってくれるような、そんな美しい3分7秒の甘美。

ちなみに、この『BIG BAND』と言う作品は、A面とB面でアレンジャーが違っていて、『TWER NYAME』の収録されているB面はエボ・テイラーが。『HAPPY SONG』の収録されているA面はアフリカン・ドラマーとしても著名なオスカー・サーリーがアレンジしている。なので、A面とB面で全然趣が違っていて、とても良いアルバムなのである。

さて、そんな偉大なミュージシャン達の中でも大きな存在感を放っていたヤンソンは、ソロのハイライフ・ミュージシャンとしてもたくさんのヒット曲を残し、1997年にはコンコンバ・アワーズと言うアワードの中で、ベスト作曲賞などの複数の賞を受賞、ガーナの音楽に貢献したと言うことで、グランド・メダルを受賞するなど生涯を通して活躍したそうだ。

願わくば、目の前でその歌声を聴いてみたかった。
ご冥福をお祈りいたします。

2017.08.01.Tue

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