【PICK UP】HIGHLIFE★HEAVEN vol.26

2017.07.22.Sat

西アフリカ発のポピュラー・ミュージック、ハイライフを中心にアフリカン・ミュージックについてお伝えする本連載の26回目!

DJ Pallaksch(=パラクシュ)によるアフリカン・ミュージックを紹介する第2回目です。

前回紹介した音源は、ナイジェリアを一変させた戦争という社会的背景の元で、違う響きをまとったハイライフ。
戦場の黒煙立つ中で、その音楽的独自性を養ったビアフラン・ロック。それと同時にフェラ・クティを起点とする”Black is beautiful”という60’sアメリカン・カルチャーへのアフリカからの回答として燃え広がったとも言えるアフロビート。

今回は前回の話の続きと補足を交えて進めましょう。

ナイジェリアに留まらずアフリカ最大のミュージシャンとして名高いアフロビートの創始者Fela Kuti(以下フェラ・クティ)。
彼がライブなどでも言ってたと思うのですが、「アフリカの真実は世界にわずか数パーセントしか伝わっていない」
とのいい様を援用するならば、アフリカの音楽はこの2017年においてもわずか数パーセントしか伝わっていないと言えます。
フェラ・クティに感動する我々は、その背後にある豊かなアフリカに感動しない手はない。
今回は、激動のナイジェリアと、そんなフェラ・クティの影に隠れてしまった二人のミュージシャンを中心に筆を進めます。

一人は前回既に紹介済みのSegun Bucknor(以下セグン・バックナー)、彼もまたアフロビートの権化とも言えるミュージシャンですが、フェラ・クティに先行する1966年前後にアメリカを2年ほど旅しています。1968年にナイジェリアの首都ラゴスに戻った後、自分のバンドを組み、前回紹介した録音を戦後に発表する事になりますが、
ハイライフの基本的かつ重要なリズム楽器クラヴェスというアフロキューバンではおなじみの拍子木の様な楽器が、セグン・バックナーの曲では全く新しいリズムを刻んでいます。前回と同じアルバムからの別音源で再確認してみましょう。

彼は60年代初期はロイ・シカゴというナイジェリアのハイライフのビッグ・スターの一人の元で演奏していたので、フェラ・クティと同じく、ハイライフが音楽のスタート地点と言えます。フェラ・クティも1968年のアルバムデビュー(ビートルズと同じレーベル!)の後、1969年にツアーで十ヶ月ほど滞在しており、そこでアメリカの黒人思想に強く共鳴して帰って来ています。

帰国後に出したシングルはそれ以前のハイライフ/ジャズな演奏から、アフロビートへの明確な移行を表現し始めていて興味深い所です。ちなみにアフロビートという呼称はそれ以前の1967年のガーナ旅行の際に意識された様なので、1970年前後のフェラ・クティの音楽的深化の過程はとても興味深いです。が、更に興味深いもう一人の異才Bola Johnson(以下ボラ・ジョンソン)のアフロビートをこの連載では紹介しましょう。

ボラ・ジョンソンは、1964年より17歳にして自分のバンドを率く早熟の天才だった様で、ハイライフ・バンドとしても一級の実力をもったリーダーでした。

そしてフェラ・クティやセグン・バックナーらに先行して、この創造力に溢れた若者はハイライフの殻を瑞々しくファンキーにブチ破る様なアルバムを製作しています。若干21歳。長い曲ですが中盤の劇的な展開を是非堪能ください。

残念にも若すぎる故、大御所ひしめくレーベルの内ではプロモーションも大きくされず、現在の不思議なほど低い知名度の遠因となっています。
ボラ・ジョンソンもセグン・バックナーも一部を除きオリジナルを見つける事は不可能に近いと言えるアーティストでもありますが、幸いにも編集盤や再発がいくつかございますので、そちらも含めて是非チェックして頂ければ幸いです。今回お伝え出来る内容もそれらに負ってもおります。

最後に、イギリス人ミュージシャンの中で、戦後の勃興時のナイジェリアの創造性に打たれたドラマー/Ginger Baker(以下ジンジャー・ベイカー)がいますが、
1970年から、ジンジャー・ベイカーはフェラ・クティの元でナイジェリアを中心に6年間居住しバーも経営したそうで、1971年に撮られた彼のドキュメンタリー映像は当時ラゴスの雰囲気を感じる上で大変興味深い作品です。
フェラ・クティは勿論、セグン・バックナーの素晴らしいライブ映像も収められており、彼のもつ熱量を存分に感じて頂けると思います。

なお、そのドキュメンタリーでは、ジョニ・ハーストラップ 、ティー・マック、ツンデ・クボイェ、ラオル・アキンス、ザ・リジャドゥ・シスターズ。そしてセグン・バックナーら1980年代のディスコ、ブギー・シーンでも輝く錚々たるメンバーが集まってのセッションも収められております。

それではまた次回。

2017.07.22.Sat

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