【PICK UP】 HIGHLIFE★HEAVEN vol.21

2017.05.01.Mon

西アフリカ発のポピュラー・ミュージック、ハイライフを中心にアフリカン・ミュージックについてお伝えする本連載の21回目!

この7インチシングルを手に入れられた事は、これまでの人生の中でいくつか起こった、素敵な事の一つであることは間違いない。

聴くたびにそう思わせてくれるのが、ハイ・クラス・ダイヤモンズの1965年に英国はDECCAからリリースされた7インチのB面に収録された『KAE ME』と言うナムバーだ。

・HIGH CLASS DIAMONDS – KAE ME

その場の空気を一変させるような、まるで空間を切り裂く鋭利な刃みたいに強烈なトランペットの音色で幕を開けるこの曲は、BPM早めのアップテンポなメレンゲ。ギターバンド・ハイライフの楽団としては珍しく、この曲だけはホーンセクションが入っていて、それも大々的にフィーチャーされている。その突っ走るようなギターのフィンガーピックとのアンサンブルも抜群で、リズムの絶妙さも相まって知らずに聴いていても思わず体を揺らしてしまう強力なダンスナムバーでもある。それにしても、この恐ろしい破壊力を持つトランペットを吹いているのは一体誰なんだろうか。

個人的なことだけど、大体の場面において、この曲と続けてメロディー・エイセスの『LYSIE SI ABOTAR』と言うメレンゲに繋ぐのが鉄板セットで、これはたぶんあと15年ぐらいは続けてくと思う。15年後ぐらいにはこの2つの曲が、とてもポピュラーでハイライフのクラッシックとして認知されていたなら本望である。

さて、個人的『新・3大ガーナにおけるギターバンド・ハイライフ楽団』の一角であるハイ・クラス・ダイヤモンズ(以下、ダイヤモンズ)だけれども、前回のロイヤル・ブラザーズ・バンド同様、いやそれ以上に情報が少ない。ロイヤル・ブラザーズや、次回のアコンピズ・ギター・バンドが7インチ数枚に加えて、10インチをそれぞれ1枚ずつリリースしてるのに対し、なんとダイヤモンズは今のところ3枚の7インチのリリースを確認できるのみ。それも3枚のうちの2枚は収録曲が重複してるので、実質2枚のみと言うこととなる。なんてことだ。寡作にもほどがあるぞ。

と言うことで、重要な情報源となるのはやはりレコードのジャケットや、ラベルに書いてあるクレジットなどになるわけだが、残念ながら私の持っている彼らの7インチにはリーダーやボーカリストの表記がない。しかしながら、プレスの時期や国によっては記載されてたりもするので、もしメンバーの情報が表記されてるレコードを持っている方がいましたら、ぜひ情報提供をお願いします。

だが、彼らの1963年にDECCAからリリースされた4曲入りのEPはジャケットが付いている。せめてもの救いと言うやつだ。

1

HIGH CLASS DIAMONDS – ON THE BEAT WITH THE DIAMONDS
(DECCA WEST AFRICAN SERIES / WAX.123 / 1963年)

このグレッチ風のギターを抱えた凛々しい佇まいの彼が果たしてリーダーだったりするのだろうか。

片面2曲を収録したこのEPだが、4曲のサブ・タイトルはそれぞれ、ハイライフ、スウィング、チャチャ、ルンバとなっていて多彩である。

・HIGH CLASS DIAMONDS – MEKOBI

こちらは1曲目に収録された唯一のハイライフである『MEKOBI』i。いつ聴いても鮮烈なイントロのロックンロール調のギターリフに、思わずウットリとしてしまうテンポ早めのハイライフ・ナムバー。コードや展開などもとってもシンプルで、ギターバンド・ハイライフらしくギターが全編を通して弾き倒されている王道的なナムバー。それにしても、なぜこのイントロにアレンジしているのかが謎だが、ダイヤモンズの面々が、当時イケイケな気分でこのあたりをレコーディングしていたことを想像すると、なんだか微笑ましくも思う。

・HIGH CLASS DIAMONDS – NYAME BEKYERE

続く2曲目には”スウィング”とサブタイトルのついたこちらのナムバー。スウィングと書いてあるけれど、いわゆるビッグバンド・スタイルの華やかさはないが、いなたさが抜群にかっこいい。ダンスバンド・スタイルのハイライフでは、ビッグバンドやスウィングの影響を色濃くにじませてるバンドも多いけれど、ギターバンド・スタイルはさほど多くない気がする。ギターバンド・スタイルの初期に活躍したクワベナ・キング・オニイナがジャズギターのコードをパームワイン・ミュージックやネイティヴ・ブルースに持ち込んだと言われているけれど、彼らダイヤモンズも、その影響を受けていたのだろうか。

最後にお届けするのは、彼らの楽曲の中でも『KAE ME』に注ぐほどの”トロピカル”さを誇るナムバー。イントロから全開で弾かれまくるギターが凄まじい存在感を放っているが、ハイライトは一体全体どんな出力とエフェクトをしたらこんな音になるんだろうか?と思わずいぶかしんでしまうほどの音色を放つギターソロ。ぜひご堪能いただきたい。

・HIGH CLASS DIAMONDS – ONUA GYAE

さて、あまりにも情報が少ないが為に、ただの音源紹介となってしまった感のあるハイ・クラス・ダイヤモンズ。でも文字でいくら伝えるよりも、実際に聴いてもらうのが何よりもの情報源だしねってことでご容赦ください。

噂によると、ハイ・クラス・ダイヤモンズには、ツイストの曲もあるらしい(ガーナもナイジェリアも割とツイストの楽曲もある)。しかし、未だにお目にかかったことはない。

まだまだ探求の旅は続く。この連載もまだ続きます。

2017.05.01.Mon

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