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【PICK UP】 HIGHLIFE★HEAVEN vol.16

2017.02.17.Fri

西アフリカ発のポピュラー・ミュージック、ハイライフを中心にアフリカン・ミュージックについてお伝えする本連載の16回目!

こんにちは!shochangです。

日々生きていると、「ああ、なるほど。その気さえあれば学べることは本当に多いんだな」と思わせてくれることはたくさんある。

2015年に英国のSoundwayがリリースした『HIGHLIFE ON THE MOVE: SELECTED NIGERIAN & GHANAIAN RECORDINGS FROM LONDON & LAGOS 1954-66』と言うコンピレーションにはとても多くのことを学ばせてもらうことができた。

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“HIGHLIFE ON THE MOVE: SELECTED NIGERIAN & GHANAIAN RECORDINGS FROM LONDON & LAGOS 1954-66”

今作はロンドンを中心に活躍した1950年代から60年代のナイジェリアやガーナのハイライファー達の音源が収録されていて、そこにはなんとなんと、フェラ・クティの最初期に録音されたハイライフ音源も収録されていると言うことで、アフリカ音楽ファンの間ではリリース当時大きな話題となっていた。それを抜きにしてもこの作品は内容も素晴らしいし、貴重な写真がいっぱい乗ってるブックレットも付いてくるので、買い逃した方は万難を排して探してみた方がいい。

さて、私の今作の中で一番のお気に入りのアーティストはフェラ・クティでもなく、アンブロース・キャンベルのウェスト・アフリカン・リズム・ブラザーズやブラック・スター・バンドなどではなく、別にいた。その名もオグブエシ・エレアザール・チュクウウェタル・アリンゼ。通称E.C.アリンゼである。

2016年には、やはり英国のSOUL JAZZがコンパイルした『NIGERIA FREEDOM SOUNDS! CALYPSO, HIGHLIFE, JUJU & APALA: POPULAR MUSIC AND THE BIRTH OF INDEPENDENT NIGERIA 1960-63』がリリースされる。

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“NIGERIA FREEDOM SOUNDS! CALYPSO, HIGHLIFE, JUJU & APALA: POPULAR MUSIC AND THE BIRTH OF INDEPENDENT NIGERIA 1960-63”

こちらはまさにそのタイトル通り、独立当時のナイジェリアを彩ったハイライフ、ジュジュ、アパラと言ったフリーダム・サウンドを集めたコンピレーションで、アリンゼはこちらにもしっかりと収録されている。

DECCAから1960年にリリースされた彼の10インチ『HIGHLIFE OF NIGERIA』にはヨルバやイボで歌われるハイライフの他に、

“みんなサタデー・ナイトが好きなのさ”

と、ピジン英語で歌う『SATURDAY NIGHT』や、前述のSOUL JAZZのコンピ『NIGERIA FREEDOM SOUNDS』にも収録されている名曲『FREEDOM HIGHLIFE』、そして数多の現場で一度鳴らせば、数々の音楽好きを唸らす、コンゴ民主共和国の初代大統領ルムンバについて歌ったナムバー『LUMUMBA CALYPSO』も収録されている。

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E.C.ARINZE & HIS MUSIC – HIGHLIFE OF NIGERIA
(DECCA WEST AFRICAN SERIES / WAL 1017)


“SATURDAY NIGHT”


“FREEDOM HIGHLIFE”


“LUMUMBA CALYPSO”

「捨て曲が一切ない」とは使い古された謳い文句のように思えるけれど、実際にこの10インチには捨て曲が一切なく、もっと世の中に広まった方がいい類の名盤である。

ヴィクター・オライヤ、クリス・アジロ、そしてボビー・ベンソンと言ったナイジェリアのハイライフにおける巨人達と、並んで語り継がれるアリンゼは、85歳まで生きたらしい。

1960年代中頃にやはりDECCAからリリースされた『MO RE LONDON』は、フックの効いたイントロのギターと、小気味良いミッドテンポのリズム、そしてシンガロング・スタイルのコーラスワークなどから、当時のアリンゼの充実さがビシビシと伝わってくる最高のハイライフ・ナムバー。


“MO RE LONDON”

そのB面に収録されている『ADIAKALU UBOSI』もスウィング感とガレージ感に満ちた最高のキラー・ナムバー。


“ADIAKALU UBOSI”

これらの素晴らしいナムバーに共通しているのは、どれもこれもヒップで最高なトランペットだが、これは偉大なトランペッターでもあったアリンゼ本人によるもの。

彼は英国人トランペッターであるエディー・カルヴァートに影響を受けて、そのスタイルを模倣し、ヴィクター・シルベスターやジョー・ロスと言ったボールルーム・ダンスの巨匠にも精通していたとされる。

ナイジェリア独立初期、ハイライフが形作られてくにあたって、ヨルバ・ドラムをうまいこと取り入れたオライヤやロイ・シカゴ、男臭くエモーショナルな歌声で存在感を示したレックス・ローソンのような創造性をアリンゼは発揮したわけではなかったかもしれない。けれども、そのメロディ・センスは際立っていた。

その証拠に、キャリアの初期に残した『NIKE NIKE』と言うナムバーは、ナイジェリアの警察で結成されたマーチングバンドであるナイジェリアン・ポリス・バンドのセットリストにも採用された。


“NIKE NIKE”

トランペッターと同時に、優れたバンド・リーダーでもあったアリンゼは、ヴィクター・ウワイフォやピーター・キングと言う、後にミュージシャンとして世界的に有名となる若い才能を見出すなど、音楽的育成にも力を入れていた。まさしくナイジェリアにおけるハイライフの偉人である。

写真で確認できる通り、とても穏やかで優しい人柄で、関わった人々みんなに愛されたと言うアリンゼは、2015年に亡くなった。寂しいことに世代間の格差が原因で、ナイジェリアではその死はそれほど大きなニュースにはならなかったそうな。

最後にアリンゼの言葉を引用して、今回は終わろうと思う。

“When you give somebody what he doesn’t have he appreciates it more. And you can’t even do it better if you are imitating his own kind of music.”

【DJ Schedule】
●SHOCHANG (HIGHLIFE HEAVEN)
・2/28(Thu) 
『TipToe Garden Vol.1』
@下北沢THREE

Open/Start19:00
Entrance Free (1st Drink 1,000yen)

Info: http://www.toos.co.jp/3/3_schedule.html

2017.02.17.Fri

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