【PICK UP】 HIGHLIFE★HEAVEN vol.13
2017.01.05.Thu西アフリカ発のポピュラー・ミュージック、ハイライフを中心にアフリカン・ミュージックについてお伝えする本連載の13回目!
皆様明けましておめでとうございます。本年も本連載を宜しくお願い申し上げます。
第3回目から筆を取らせて頂いている三橋です。
ギターって良いですよね。
本連載第9回で個人的に面白いジャケットを載せた回をお読みになった方はお気付きかもしれませんが、楽器や機材が大好きでして、中でもギターが大好きであります。
見たことも無いビザールなギターからヴィンテージ・ギター、定番物のレア・カラーなど、一つの機種を取ってみても時代に合わせた仕様の変化があったりと、弾くことはもちろん、様々な角度から楽しむことができます。
どんなジャンルにおいても言えますが、アフリカの音楽においてもギターは非常に重要なパートになっていて、ギターが無かったらアフリカ・ポピュラー・ミュージックは今とは違う歴史になっていたのでは?と思わせるほど。
例えばこの曲。
トロピカル・ジョリ・バンドがギニアの国営レーベルSyliphoneから1980年にリリースしたアルバム「Style Savane」から”Soko”。
個人的にとんでもなく衝撃を受けたバンドなのですが(おそらく)唯一作。
基本的なバンド編成にホーン隊、パーカッションという大所帯で重厚なアンサンブルを聴かせてくれますが、注目は何と言ってもこの2人のギターの掛け合いではないでしょうか。
この曲のグルーヴの根幹を成しているキツめの跳ねた16分音符をスタッカートをたっぷり聴かせて反復させる
このギターは、パーカシッヴさとトロピカルで甘めなメロディを2本のギターのハーモニーの中に同居させた名演だと思います。
しかも早いBPMで弾ききる技術力の高さ!何回聴いてもどうやって演奏してるのかわからない!
■Smahila & The S.B.’s – Plan With God
1978年にリリースされたスマヒラ & The S.B.’sの冒頭曲。出だしからチューニングの怪しさはご愛嬌ですが(後半ヒドすぎて笑える!)、カリプソのようなトロピカルでハートフルな雰囲気の中、2人のギターが生み出すグルーヴ感がずっと聴いているとクセになるスルメのような曲。
左右のギターでリズムの割り振りやコードとハーモニーの役割分担も出来ていて、モザイク状に絡み合うこの感じが独特の”クセ”に繋がっているような、「バンドって良いな。」と思うあの感じがこもってる1曲です。
■Orchestre Les Djo Djo – Nabukodonozor
つんのめったようなベースのリズムがたまらなくポップで愛らしい1曲。途中からリズムパターンが変わって、よりグルーヴするところもイカしています。
これもギター2本の編成で、左から聴こえるギターは基本的にベースとユニゾンの型、右から聴こえるギターがそれに対し裏メロを取るかのようなメロディアスなギターを弾いています。
音色がチープながら(そこもたまらない!)やっていることはとてもアイディアに溢れていて、右から聴こえるギターの感覚を是非ギター・キッズに現代へアップデートしてもらいたいです!
ドラム・パターンもレゲエ好きならビビッとくるかもしれません。鳥のジャケットもポップでいい感じ。2017年は酉年ですし。
■Oliver De Coque & His Expo’76 – I Salute Africa
まずジャケットからしてヒップなこちら、なんと豪華に3本ものギターを重ねています。そしてドラムレス。
左がリズム・ギター、右が裏メロ的なギター、左右2本でハーモニーを生み出していて、真ん中で鳴るギターがメインとなる旋律を弾くパートという割り振り。メインギターにたっぷりとかけられたリバーヴもたまらないですね。
ドラムが無い分パーカッション、ベース、ギターだけでノリをつくる為にここでもギターが大活躍!
トロピカル・ジョリ・バンドのようにスタッカートを効かせてパーカッシヴに演奏するのではなく、音程の上下関係でノリを出しているように聴こえます。
左から聴こえるリズム・ギターが強調したい裏拍にトップの音を持ってくることでグルーヴを生み、右のギターがさらに味付け的なリズムを付け足しています。ドラムが無くてもここまでのグルーヴを生みだすことができるのですね。。。凄い!
ここまで聴いてみてそれぞれに共通して言えることは、ギターがメロディやコードを弾きながらパーカッションに近い役割を同時に担っているということ。
それを2本のギターで割り振って、色彩感が出るようにハーモニーを出していく。
まるで小ちゃなオーケストラのようです。
「レゲエはリズムの音楽と考えがちだが、ジャマイカの演奏者はレゲエはメロディの音楽と考えている。」
といった話を以前聞いたことがありますが、もしかするとアフリカのポピュラー・ミュージックにも同じことが言えるのかもしれません。
民謡に根付いたメロディを奏でたり、キューバ音楽に近いメロディを口ずさんだり、流れるようなメロディをさらりと歌ったりと(上記のオーケストラ・ジョ・ジョのボーカル・メロの美しさなんてどうかしてる!)、じっくり聴いてみるとリズムの強烈さは然る事ながらハーモニーの美しさ、流暢なメロディにも耳を奪われます。
お正月にボケッとテレビを観ていたところ「オーケストラ」という映画が放送されていました。
驚いたことにその映画にタラフ・ドゥ・ハイドゥークスというジプシー・バンドのメンバーが出演していました。しかもかなり重要な役で。
(映画内で)世界的に有名なヴァイオリニストが彼らの演奏を聴いて「すみません、今のどうやったの?どこで学んだの?」という台詞を漏らすシーンがあったのですが、アフリカのギター奏者の演奏を聴くとまったく同じことを感じてしまいます。