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【PICK UP】 HIGHLIFE★HEAVEN vol.11

2016.12.02.Fri

西アフリカ発のポピュラー・ミュージック、ハイライフを中心にアフリカン・ミュージックについてお伝えする本連載の11回目!

こんにちは。三橋です。

「Original Music」というレーベルをご存知でしょうか。

1980年代から活動し90年代にはその活動を終えてしまったアメリカのレーベルで、アフリカの音楽に的を絞ったリリースを行っていました。
アフリカ各国のギター・ミュージックのコンピレーションや数年前に再発が行われ大きな話題となったカメルーンの異才フランシス・ベベイのアルバム、世界で最も治安の悪い国とも言われるソマリアの音楽やブロードウェイ・ダンスバンド、オーケー・ジャズなどハイライフのビッグ・バンドを集めたコンピレーションなど民族音楽からダンス・ミュージックまで幅広くリリースをしていました。そして何よりも工芸品的に音楽を扱っていないところも素晴らしく、フランシス・ベベイも民族音楽もハイライフも全て並列してリリースするところも惹かれた部分であります。ジャケットデザインも統一感のあるジャケットでかっこいいですよ。

そんな「Original Music」のリリースの中でも個人的に特に異彩を放っていると思われるのが、東アフリカ沿岸のスワヒリ語圏の大衆音楽をまとめたLP「Songs The Swahili Sing – Classics From The Kenya Coast」という名前のアルバム。

これは東アフリカ沿岸のスワヒリ文化に花開いた、詩と物語を音楽化した大衆音楽「ターラブ」の音源をまとめたレコードになります。

「ターラブ」はインド洋を通したアラブ 圏とアフリカ東海岸との貿易によって生まれたとされ、様々な文化が混ざり合った混血の音楽で、そういう意味ではハイライフと非常によく似た背景があったと言えるのかもしれません。

しかし、混血音楽という意味ではハイライフと似ているのかもしれませんが、その音楽性は驚くほど異なっているのがアフリカ音楽の面白いところ。
楽器編成も弓演楽器やパーカッション、アコーディオンなどアフリカ文化と外来文化がミックスされた編成で、日本人好みとも言える哀愁感漂う雰囲気の中、畑仕事に疲れてしまった日常のことや恋のお話、兄弟愛や哲学にも近い普遍的なことを唄ったりしています。

「Songs The Swahili Sing – Classics From The Kenya Coast」の冒頭を飾る曲からどうぞ。

非常にアラブ的な音階によって紡がれるメロディ、楽器編成も想像するアフリカとは異なりながらも独特のつんのめったかのような訛りのあるリズム感覚や歌の隙間に入るオーケストレーションはエチオピアなどのアフリカの音楽を想起させます。

ターラブの生まれ故郷は、現在のタンザニア沿岸に浮かぶ島ザンジバルとされ、貿易の一大拠点だったそうです。そこの宮殿楽団として編成されたのがターラブのはじまりとされ、だんだんと民衆の間にも広まっていったといいます。

そしてそんなターラブの中でも”女王”と呼ばれるのがビ・キドュデという方です。2013年に残念ながら亡くなってしまいましたが、なんと10歳の頃から歌を唄い恐らく90歳を越えていながら(生年月日が不詳)2007年には東京と大阪で来日公演まで行っている文字通り女王。

そんな女王の2009年のライヴ映像がこちら。
ノッシノッシとご登場の後一礼二礼のお姿だけでも痺れますが、唄いだしたときの深みや重さは文化の中で生きてきたビ・キドュデにしか出し得ない唯一無二の凄みがあります。曲が終わったあとの「演奏ええやんけ。」と言っているかのような表情は完全にミュージシャン!

最後にターラブのCDで出た貴重なコンピレーションの中から一曲載せておきます。

「ターラブは聴くものにやすらぎを与える音楽で、世界のこと、恋愛のこと、人生において現れる多くのことがらについて思いをめぐらす音楽である。ターラブの中に人は励ましのメッセージを受け取る。それは歌詞によって運ばれ、独特の音を出す楽器群によって紡ぎ出される甘美なメロディーによって支えられている。(ウード奏者・マーリム・イディ・ファラハン)

2016.12.02.Fri

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