【PICK UP】 HIGHLIFE★HEAVEN vol.8
2016.10.15.Sat西アフリカ発のポピュラー・ミュージック、ハイライフを中心にアフリカン・ミュージックについてお伝えする本連載もあれよあれよと8回目!
今回は、自称ハイライフ・クレイズの不肖わたくしSHOCHANGが、魂と偏愛を込めてギターバンド・ハイライフをお届け。
1966年にジャマイカを襲った強烈な熱波のせいで、それまでダンスホールのド定番だったテンポの速いスカは、踊ることも演奏することも辛くなった。なので、次第にテンポを落としていった結果、ロックステディが誕生したと言う。
これはロックステディ誕生の逸話としてとても有名な話だそうで、初めて聞いた時、ウソみたいだけどなんだかロマンチックだし、当時のジャマイカの人々の音楽に対する情熱の強さに胸打たれた。
同じ1960年の半ば頃、それまで隆盛を誇ってたガーナのダンスバンド・ハイライフの楽団達もまた、その勢いを失っていったと言う。
でもそれは強烈な熱波のせいじゃなくて、1957年の独立後、安定しない経済の影響で、管楽器隊を含む大所帯のビッグバンド・スタイルを維持していくのが困難になっていった為だったそうで、代わって、よりミニマルな編成でライヴを行うことの出来るギターバンド・ハイライフがポピュラーなものになっていった。だ。
もちろん、それまでにもギターバンド・スタイルのハイライフバンドはいた。
E.T.メンサーと同時期に生まれ、”モダン・ハイライフのゴッドファーザー”と呼ばれたE.K.ニアメ率いるイーケーズ・バンド・ナンバーワンや、クワベナ・キング・オニイナ率いるオニイナズ・ギター・バンドなどは、1950年代後半頃から活躍し、ダンスバンド・スタイルの楽団と同時期にレコードをリリースしたりしていた。
ギターバンド・ハイライフの特徴は、ダンスバンド・スタイルよりもシンプルな音数と、その名の通りギターをフィーチャーしているところで、ハイライフのルーツの一つと言われるパームワイン・ミュージックで聴ける独特なギターのサウンドが、ダンスバンドよりも際立ってる。
そんなギターバンド・スタイルを確立したと言えるのが、E.K.ニアメとキング・オニイナだった。
E.K.’s BAND No,1 – MAYE MMOBO
ONYINA’S GUITAR BAND – AFEHYIA PA
ギターバンド・ハイライフのバンド達が影響を受けたり、取り入れた音楽としてはカリプソ、マンボ、メレンゲにチャチャ、そしてスウィングなどなど、ダンスバンドの楽団とあまり大きな違いはない。強いて言えばネイティヴ・ブルーズの影響が色濃い点だろうか。
ダンスバンドに比べ、いなたさが良くも悪くも濃い目のギターバンド・ハイライフだが、通のハイライフ・ファンやカリプソ、カリビアン・ミュージックファンにはギターバンド・ハイライフ好きが多い。
それはたぶん、そのギター奏法、独特なコード、リズムがあまりにも独創的だからで、5、60年経った今でも色あせず、その摩訶不思議な音色を聴くたびに、懐古主義とは全く別の、とても新鮮な驚きと衝撃を感じることが出来るのだからすごい。
1950年の後半から、1960年の半ばぐらいにかけて、ダンスバンド・スタイルの楽団がたくさんレコードをリリースしたのと同様に、ダンスバンド・スタイルの衰退後は、今度はギターバンド・スタイルのバンドが雨後の筍のようにたくさんレコードをリリースした。そして、そのスタイルは根強く影響を与え続け、以後のハイライフ・バンド達のスタイルの主流の一つとなっていく。
ヤモアズ・バンド、アクアボアズ・ギター・バンド、カカイクズ・ギター・バンドにオコズ・ギター・バンドと言ったバンドの中には 、後にソロのバンドでデビューを果たすオククセク・ギター・バンドのコフィ・サミーや、ドクター・ケー・グヤシなども在籍していたそうだ。
YAMOAH’S BAND – EYE WUO
このヤモアズ・バンドは1970年代を通して活躍した名バンドでもある。
そんな数多溢れていたギターバンド・ハイライフの楽団の中でも、もちろん突出したバンドというものがいる。もちろん私の愛情が突出したバンドと言う意味でだが。
なので、今回は独断と偏見で、それらのバンドたちをキラーなナムバーと共に、
『新・ガーナの三大ギターバンド・ハイライフ』
と、勝手に名付けて紹介させてもらおう。最後までお付き合いくださいね。
一つ目のバンドはアコンピ率いる、アコンピズ・ギター・バンド。
AKOMPI’S GUITAR BAND – MEREMMA BIO
このイントロのギターリフからの、まさにギターバンド・ハイライフ・クラシックと呼ぶにふさわしいリズムと曲の展開具合、そしてラスト付近のギターソロを初めて聴いた時、あれは中野から東中野ヘ向かう線路沿いの道を歩いていた時だったが、あまりの衝撃に思わず笑ってしまったほどだった。
アコンピのバンドには、こう言うロックンロール風味と言うか、わりとヘヴィなリフで始まる曲が多いのである。
AKOMPI’S GUITAR BAND – AKOTAN
こちらもアコンピ流のハイライフが炸裂したと言える高速ギターバンド・ハイライフ・ナムバー。後ろで必死にリズムを取り続けるクラベスの音がとても印象的。
1970年代後半から、1980年代にかけてハイライフはリンガラに接近して、スークース(西アフリカ産でのリンガラの名称)色が濃くなり、テンポも早くなっていくが、この曲における、言わば破茶滅茶で無秩序で性急なリズムのハイライフ・ナムバーは、スークースの中でもあんまり見当たらない。アコンピは、ぶっ飛んだバンドリーダーだったに違いないのである。
続く二番手、ハイ・クラス・ダイヤモンズの名曲『MEKOBI』も、イントロの衝撃度は高い。
HIGH CLASS DIAMONDS – MEKOBI
まるでピュア・ロカビリーのようなギターではないか。イントロのみならず、曲中絶えず弾き倒されるギターもすごい。繋げ方次第で、強烈なダンス・ナムバーに変貌するキラー中のキラーでもある。
だが、ハイ・クラス・ダイヤモンズのすごいのは何もこの曲だけでなく、その多様性にある。『MEKOBI』の収録されたシングルは4曲入りで、他の3曲はそれぞれスウィング、チャチャ、ルンバをハイライフ風味にアレンジした曲だが、この次のメレンゲをアレンジした曲がものすごい。
HIGH CLASS DIAMONDS – KAE ME
空気を切り裂くようなホーンの音色と、ダンサブルなリズム。そして、ギターバンド・ハイライフにして、全編を通してギターの代わりに吹き倒される暴力的なまでのトランペット。とてもいなたくエフェクトされたギターの音を聴く限り、彼らもまた、とんでもない変態的バンドだったんじゃないかと想像せざるを得ないのである。
最後、トリを飾るのがロイヤル・ブラザーズ・バンドである。
ROYAL BROTHERS BAND – OBAA STELLA
彼らもまた、1960年代のギターバンド・ハイライフを代表するバンドの一つであり、根強いファンの多いバンド。そして、現場で回していて問い合わせがグンバツに多いバンドでもある。
この曲はルンバのリズムとなっており、独特の奏法で鳴らされるギターも確かに素晴らしいが、特筆すべきはラストあたりで下手すりゃシンガロングもできそうなほどにキャッチーなそのメロディ。彼らのメロディ・センスはグンバツなのだ。
ROYAL BROTHERS BAND – OKUKUSEKU
こちらは個人的なハイライフ・アンセムの一つ。曲中の『OKUKUSEKU』とは、ガーナやナイジェリアで飲まれているポピュラーな酒の名前で、ジンに似た酒らしい。
酔いどれをイメージしたような酩酊調のギターと、チャチャなのに「マンボ!」の掛け声とキャッチーなサビ。これはひょっとしたら、ガーナを代表する酔いどれナムバーなんじゃないだろうか。なおかつこの曲がすごいのは、シンガロング・パートとダンシング・パートに明確に分かれているところで、
オーククセクー♫
とひとしきりシンガロングした後、たたみかけるマンボ調のダンシング・パートで踊り狂うのだ。そのグルーヴ感たるや、戦慄の極み。恐るべし、である。
以上が、個人的に提唱する『新・ガーナの三大ギターバンド・ハイライフ』だ。
もし異論のある方は、あなたなりの三大ギターバンド・ハイライフをぜひ教えて欲しい。ぜひディスカッションしましょう。ハイライフ・シーンの活性化のためにも。
【DJ Schedule】
●SHOCHANG (HIGHLIFE HEAVEN)
◆ 10/23 (Sun) 『パームワイン・ミュージック&ハイライフ・ナイト』
@吉祥寺World Kitchen Baobab
Open18:00/Start19:30
Entrance Free
投げ銭Live・Robbie & Billy(fromガーナ)
DJ:…Shochang(Highlife Heaven)
INFO: http://wk-baobab.com/
Soundcloud:https://soundcloud.com/shochang-highlife-heaven
Mixcloud: https://www.mixcloud.com/shochangmorichan